世界最大のラグジュアリーコングロマリット LVMH (モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン) の投資会社 L Catterton が、KAPITAL の過半数株式を正式に取得した。同社は、Birkenstock や A.P.C. もポートフォリオに保有している。
LVMH の支援を受けた投資会社 L Catterton が、驚くほど静かに Kapital の過半数株式を取得したことが報じられた。あまりにも静かだったため、Highsnobiety がこの取引について最初に報道した。
この取引は数ヶ月前に完了していたにもかかわらずだ。また、この買収は突然の出来事というわけでもない。L Catterton は、日本への金融進出を狙ったより大きな入札の一部として、Kapital の買収を狙っているようだ。
日本市場への進出の一環
L Catterton が KAPITAL を取得した背景には、日本市場でのさらなる財務的な基盤強化を狙う戦略があると見られています。
KAPITAL は、日本国内外でその独特なデザインと職人的な品質で支持を集めるブランドであり、この買収は同社のグローバルなポートフォリオを強化するだけでなく、日本市場への深い浸透を目指すものと考えられます。
L Catterton の影響力
L Catterton は、LVMH と連携して複数の著名ブランドに投資し、成功を収めています。たとえば、Birkenstock ではそのライフスタイルブランドとしての地位をさらに拡大し、A.P.C ではそのミニマリズムデザインをグローバルに展開する助けとなりました。
今回の KAPITAL の取得も、同様にブランドの国際的な成長を後押しする可能性があります。
LVMH の過去30年以上にわたる買収履歴
LVMHのかこ30年間の買収履歴。 pic.twitter.com/ITKg5pkk8o
— Tetsuro Miyatake (@tmiyatake1) November 27, 2023
LVMH の収益成長は、1989年時点での収益は約30億ユーロでしたが、2022年には790億ユーロに成長しています。この30年以上で約24倍の成長を遂げています。
この大規模な成長は、今回の Kapital の株式取得のように積極的なブランド買収戦略が大きな要因となっています。
LVMH、買収前(1989年以前)
既に LVMH グループに含まれていた主要ブランドには、以下が挙げられます。
– Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
– Moët & Chandon(モエ・エ・シャンドン)
– Givenchy(ジバンシィ)
– Dior(ディオール)
– Hennessy(ヘネシー)
– Dom Pérignon(ドン・ペリニヨン) など
これらのブランドが基盤となり、後の買収活動の財政的な支えとなりました。
LVMH、1989年以降の主な買収の流れ
1989~1995年には、Kenzo、Berluti、Loeweなど、ファッションブランドを中心に拡大。Guerlain(香水・化粧品ブランド)などの高級ビューティ部門も強化しました。
1996~2000年には、Sephora(化粧品リテールチェーン)やDFS(免税店)など、リテール事業にも注力。時計やジュエリーブランド(TAG Heuer、Chaumetなど)を取り込み、高級時計・ジュエリー市場への進出しています。
2001~2010年には、Fendi (フェンディー) や Pucci など、ラグジュアリーファッションブランドを拡大。スコッチウィスキー(Glenmorangie)や高級ワイン・スピリッツ(Belvedere)の買収により、アルコール部門も強化しました。
2011~2020年のは、Bvlgari(ブルガリ)やRimowa(高級ラゲージ)、Fenty Beauty(リアーナによるコスメブランド)など、ブランドポートフォリオをさらに多様化。
高級ホテル(Belmond)や船舶(Royal Van Lent)など、ライフスタイル関連にも進出しています。
2021~2022年には、Tiffany & Co.(ティファニー)の買収は、特に注目を集めました。これにより、高級ジュエリー市場での存在感をさらに高めています。更に、Off-White の買収により、ストリートファッション領域にも進出しています。
ここに2024年 (2025年に明かになった)、Kapital という日本を代表するデニムブランドが加わったことになります。
LVMH ブランドポートフォリオの多様性
LVMH の戦略は、以下のように各部門でのバランスの取れた成長を目指しています。
ファッション・レザーグッズ = ルイ・ヴィトン、フェンディ、セリーヌなど
化粧品・ビューティ = セフォラ、ディオール ビューティ、フェンティ ビューティ
ワイン・スピリッツ = モエ・エ・シャンドン、ヘネシー、グレンモランジ
時計・ジュエリー = タグホイヤー、ブルガリ、ティファニー
リテール&ライフスタイル = DFS、Belmond(高級ホテル)、Rimowa
LVMH の成功理由
このように、多角的なブランドポートフォリオは、一部の分野に依存せず、各カテゴリーで強力なブランドを持ちます。そして高級市場への集中です。一貫して高級ブランドにフォーカスし、価格競争に巻き込まれない戦略と取っています。
グローバル展開、アジアを含む成長市場への早期進出。LVMH は、積極的な買収活動を通じてラグジュアリー市場での支配的な地位を築いてきました。この図は、同社の多岐にわたる成長戦略を一目で理解するのに役立つものです。
KAPITAL の今後
LVMH は歴史的に、良質な資産やブランドを購入し、自分たちがより良いオーナーになれると感じたものを選んできました。LVMH は、店舗ネットワークを拡大するための資本を持っており、これはラグジュアリービジネスにおいてますます重要になっています。
以前は製品やその品質、職人技が中心でしたが、現在ではリテール体験がはるかに重要になっています。LVMH はこの分野での資金力とノウハウを活用し、ブルガリを成長させる手助けをしてきました。
また、卸売への依存を減らすことにも取り組んでおり、これはラグジュアリー業界全体で見られる動きです。この戦略の狙いは、バリューチェーンをコントロールし、最終消費者との直接的な関係を築くことです。
さらに、SKU(在庫管理単位)の数を減らすなど、ビジネスを合理化し、プロフェッショナルに構造化しています。その結果は誰の目にも明らかです。
LVMH は「立て直し型」のビジネスを買収することはありません。すでに良いビジネスではあるものの、十分に管理されていなかったり、必要な資本力を持つオーナーがいなかったりするケースを選んでいます。多くのケースで、LVMH が明らかに最適な買収者であると思います。
今回 KAPITAL が L Catterton のポートフォリオに加わることで、国際市場での展開や新しい戦略が期待されます。一方で、ブランドのアイデンティティがどのように維持されるか、または進化するのかが注目されるポイントとなるでしょう。
この買収は、日本を拠点とするアパレルブランドがグローバルな舞台でどのように成長していくのか、その可能性を示す一例といえます。この報道を受けて、Reddit の r/japanesestreetwear スレッド「LVMH now owns Kapital」では、ユーザーからさまざまな反応が寄せられています。主な意見を以下にまとめました。
懸念と批判
LVMHの買収により、KAPITAL の製品品質が低下するのではないかと心配する声があります。更にブランドの価格がさらに高騰するのではないかと懸念するユーザーもいます。また外資が入ることで、KAPITAL の独特なデザインや哲学が失われ、一般的なブランドになってしまうのではないかという意見が見られます。
期待と肯定的な意見
その一方で、LVMH の資本力とネットワークを活用して、KAPITAL が海外市場での展開を加速させることを期待する声があります。人気商品の品薄状態が改善され、入手しやすくなるのではないかと期待するユーザーもいます。
懐疑的な意見
一部のユーザーは、この買収情報の真偽について疑問を呈しています。過去の事例からの懸念: 他のブランドが大手企業に買収された際に、ブランド価値が損なわれた例を挙げ、KAPITAL も同様の道を辿るのではないかと心配する声があります。
その他の意見としては、この買収が日本のストリートウェアシーンやファッション業界全体に与える影響について議論するユーザーもいます。
総じて、ブランドのファンとしては、KAPITAL の伝統や職人技が維持されることを望む声が多く見られます。
このようにユーザーの反応は賛否両論であり、KAPITAL の今後の展開に注目が集まっています。