絵本の月刊誌「こどものとも」が面白い

絵本の月刊誌「こどものとも」が面白い

先日町の本屋で偶然見つけたのが、絵本の月刊誌です。絵本にも月刊誌があるのか!?と驚きだったのですが、何よりも目に留まったのが6月号の年中向き『もぐたさんの あたらしいおへや』かわいらしい表紙で、色使いとかキャラクター、ストーリーもかわいらしくて、パラパラっとめくって購入してしまいました。

調べてみると、子供の絵本を数多く取り扱う福音館が出版している月刊誌の絵本シリーズ “こどものとも” で、子供の年齢に合わせた絵本を多数月刊誌として発売しています。

値段も480円と手頃で、絵本の冊子バージョンというような手軽さが非常に魅力的です。またこの月刊誌の絵本「こどものとも」が良いなあと思うのは、絵本の折り込み付録として、「絵本のたのしみ」という小冊子に、作者のことばや、他にもミニコーナーが掲載されています。

これにより更に絵本の世界が引き立ち、紙のお便りが何だか心地よいのです。以下、最近買った月刊誌の絵本をご紹介します。

『もぐたさんの あたらしいおへや』

もぐらのもぐたさんは、”部屋作り” が大好き。お気に入りのスコップで、地下に広がるお家にどんどん部屋を作ります。今日はどんな部屋を作ろうかなと考えていると、雨宿りのお客さんが次々(!)にやってきて、たちまち家中の部屋が満員に。そこで、もぐたさんはみんなで “雨宿りの部屋” を作ることにしました――。

小野寺悦子さんのリズミカルなことばと、家具や調度などお家の中のすみずみまで丁寧に描かれた#伊藤夏紀 さんの絵が楽しい一冊です。

ちなみに、お二人による前作『もぐたさんのたんぽぽさんぽ 』(こどものとも年中向き2020年4月号、品切)は、楽しい散歩のお話でしたが、その中で、もぐたさんはいつもお気に入りのスコップを肩にかついでいました。作品の中では、スコップの活躍する場面はなかったのですが、「もぐたさんのスコップは何に使うのですか」という読者のご質問から、もぐたさんがスコップを使って地下にどんどん部屋を作る、この続編ができました(スコップ一つで部屋の増築ができるなんて、うらやましいですね!)。

『かわのなかでは』

釣りをする人の大きな関心は、魚がエサに食いついてくれるか、というところにあるでしょう。一方、“川のなか”では、こんなやりとりがなされているのかもしれません……。

福音館の月刊絵本5~6才向けのこどものとも7月号『かわのなかでは』は、そんなお話です。おじいちゃんと孫が、川へ釣りにやってきました。さつまいもを練ってつくったエサを川に投げ込みます。「ここはな、わしが昔、大物を釣りにがした秘密の釣り場なんだ」

一方、川のなかでは、それをギンブナの“きんた”と“ぎんこ”が見ています。「わっ うまそうなにおいだぜ、たべたいな」という、きんた。「あわてて とびつかないほうが いいわよ。あぶないものかもしれないし」と、用心深いぎんこ。

2匹は、だれかに聞いてみることにしました。そうして2匹に声をかけられ、カメのかめきちくん、ウナギのうなどん、ナマズのひげじいさんといった川の仲間たちが、続々と集まってきました。

さらに、昔、黄色いだんごでえらい目にあったという鯉のこいたろうさんがやってきて……。釣り人と魚たちの知恵比べの決着はいかに。

作者は#伊藤秀男 さん。ご出身は、木曽川流れる愛知県西部。大小の川や水路が身近にあり、子どもの頃からよく釣りをして遊んだのだとか。今や天然記念物に指定されている#イタセンパラ をはじめ、本作に登場する魚たちは、子どもの頃に伊藤さんが実際に川で見てきた魚なのだそうです。

伊藤さんが以前描かれた『さかなつり』(こどものとも2001年7月号、品切)という絵本は、釣り人側から魚釣りを描いた作品ですが、本作は、反対に、魚の側から魚釣りを描いています。そんなものがたり絵本ならではの楽しみを、ぜひお子さんと味わってみてください。